2024年12月16日更新
受賞についての記載を加筆しました
2024年12月14日更新
誤字、表記ゆれ、ルビの修正を行いました
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NovelJam2024という執筆大会で描いた小説、藤井太洋賞を冠した「Meister(マイスター)」と対となる小説で、稀代のバイオリニスト「ディルク・ドルン」について描かれた「Maestro(マエストロ)」
本を入手していないとコメントは書けません。
アラン・パーカーが撮ったザ・コミットメンツという映画で、ソウル・バンドでサックスを担当しているディーンがある日突然、ジャジーなアドリブを演奏中に挿入して、仲間からえらく怒られるシーンがある。私が肉体労働のバイトをしていた時に、ジャズ好きの先輩に、これが僕の好きなジャズですと言って、ジョン・ゾーン、ビル・ラズウェル、ミック・ハリスが組んだペイン・キラーというジャズバンドのCDを貸したら、えらく怒られた記憶がある。ジョン・ゾーンはジャズミュージシャンだがビル・ラズウェルはより実験音楽的なアプローチを取り、ミック・ハリスに至ってはナパーム・デスというグラインドコア/デスメタルバンドのドラマーでBPM180以上のダブルストロークロールを駆使する超人であり、この三人が組むジャズバンドならば所謂ステレオタイプのジャズミュージックから逸脱するのは容易に想像できる。要は澤俊之の新作Maestro(マエストロ)で語っているのも、ここに示されている。何百年何千年もの伝統のあるメソッドならば、修行と称してそれに準ずるのも吝かではないが、何百年何千年もの時間をかければ、キリンの首は長くなりゾウの鼻も伸びていく。トラディショナルとコンテンポラリーを秤にかければ、どちらに重みを感じるか、という問いに対しての、著者澤俊之の天才的感性を通過した上でのアンサーが、Maestroに籠められている。次はMaestroディルク・ドルンが、Meisterエミと出会い、何を得て、何を捨てたのかということを、ディルク視点で語られたものが読みたい。少年ディルクにとってのノアは、壮年ディルクにとってのエミだったのか?興味は尽きない。
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