— 記憶は、いつもそばに
私たちは、忘れる生きものだ。
覚えていたはずのことが、気づけば遠く、かすんでしまっている。
けれどふとした瞬間、ひとつの音や匂い、光の揺れが、あの日の自分をそっと呼び戻すことがある。
それは、記憶のかけら。
拾い集めるようにたどるうち、いつしか「私」という輪郭が見えてくる。
この物語は、私が紡いできた、いくつもの「思い出し方」の記録。
どれも日常のほんのすきまにある風景だけれど、そこには確かに、あのときの「私」が、生きている。
記憶は、ただ過去を懐かしむためのものじゃない。
いまを照らし、これからへとつながっていく、やわらかくて、しなやかな灯りなのだ。
もしあなたが、いま立ち止まっているのだとしたら。
もしどこかに、大切な何かを置いてきたままだと感じるのなら。
この物語のどこかに、あなたのかけらが見つかりますように。
本を入手していないとコメントは書けません。