近代看護の基礎を築いたフロレンス・ナイチンゲール(1820-1910年)は、『看護の仕事は神からの召命である』という意識を常に抱いていた。彼女の著作『看護覚え書』をはじめ、『看護婦の訓練と病人の看護』(1882年)、『病人の看護と健康を守る看護』(1893年)、更に14篇から成る『看護婦と見習生への書簡』には、この召命(使命・天職)に関する言葉が頻繁に登場する。ナイチンゲールは、自らが関わった聖トマス看護婦養成学校の看護婦や看護見習生をはじめ、看護に携わる関係者には高い召命意識を持つよう求めていた。
特に『看護婦と見習生への書簡』(以下『書簡』と称す。)には倫理的・行動的に生きることを、看護婦と看護見習生に説く内容になっており、人の看護を行うには神からの召命意識が欠かせない資質であること、また、看護婦がこの召命意識を持ち続けるためには看護婦同士の連帯意識を持つことが必要であると考えていた。
本書では、上記の『書簡』を道標として、看護婦が持つべき三重の関心など現代の看護師にとっても看護の本質に関わる内容にも触れながら、ナイチンゲールの人生における信仰と看護の連関性を明らかにしていきたい。
また、この信仰と看護の問題は、われわれが日々の生活の中で、いかに自分自身の人生に固有に与えられた使命と向き合って生きるべきかという驚くほど今日にも通用する根本問題を扱っている。それゆえ、看護職のみならず、性別、年齢、職業を問わず、幅広い人々に関わる内容となっているのでご一読いただきたい。
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