「あなたに、話を聞いてもらえてよかった。」
面接室を出ていく母親の背中は、呼び出されたことへの不満で目も合わせなかった1時間前とはまるで別人のように、凛とした姿に変わっていました。
別の面接では、席を立とうとした母親が私のねぎらいにこう応えました。
「やってみます。今、気づけたので、大丈夫だと思う。」
足元にまとわりつく2歳の子に、「ママがお世話になった人なの。一緒にお礼しようか」と声をかけ、子どもは不思議そうな顔で小さく頭を下げました。その瞬間、母親の表情はやわらかくほどけ、子どもの手を静かに握りました。
──これは、虐待という重い現実のなかで、初めて児童相談所の面接に臨んだ保護者の変化の一場面です。
1時間の対話が、「来てよかった」と思える面接に変わる。決まった手順に従って対話を進めれば、誰でもこのような面接ができる。そうなるために、こども家庭相談に関わる職員の面接、調査、機関調整や進行管理の知識と技術について学ぶ教材です。
本書は、講座で使用するスライドと、必要なスライドに適したコメントやねらいを補足し、講師やスタッフが講座を実施する際に、教材の意図を理解し、参加者の学びを適切に導けるように作成しました。
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