今回、取り上げたフロレンス・ナイチンゲールは近代看護の基礎を築いた人として知られています。このナイチンゲールが一生の間に書き残した手紙類は、その数およそ一万通とも一万数千通ともいわれ、その大半が現在でもまとめて保存されています。
現在、保存されている手紙類の中に、14篇から成る『看護婦と見習生への書簡』(1872年~1900年)というものがあります。この書簡は、ナイチンゲールが聖トマス病院の看護婦と見習生とにあてられて書かれたものです。 この書簡には、ナイチンゲールの看護観、看護師として責任感や使命、看護の仕事、そして、看護師自身の健康を守ることの重要性などが説かれ、当時の看護学生にとっても半ば教書的な内容になっているものです。
この書簡集を取り上げるポイントとして、二点あげられます。
まず、「看護の仕事」というものが神様からの特別な召命(calling)であることを説いていること。次に、この召命を受けた看護師は高い理念を持って看護の仕事を実践するようにとナイチンゲールが強く説かれており、彼女の信仰と看護に対する思いが強く出ている書物であることです。
この書簡集を読み解いていくと、当時にあって、ナイチンゲールが如何に「看護」という仕事に魅力を見出し、「看護」の専門性を高めることにより「看護職の地位の確立」に向けて努力されたかが伝わってくるのです。そして、この書簡から彼女の力強くも一貫性を持った生き方が私たちの心に響いてくるのです。この書簡は当時の看護学生向けに書かれたものですが、看護学生のみならず私たちの日々の仕事や生き方などにも示唆を与えてくれる教えがたくさんが盛り込まれているのです。その意味で、看護職につかれている方々のみならず、多くの方々にも読んでいただきたい書物なのです。
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