<目次とダイジェスト>
はじめに 多元性に向き合う「二つの視座」
まず、究極的な世界観については、学問は「明晰性」を与えることに自己の使命をとどめ、どの世界観を選択すべきかは、各人の良心に語る規範に委ねられなければならない。
第一章 「人間の尊厳の原則」と国際社会
/1 「人間の尊厳の原則」再説
法と道徳は、同一の基礎を有する。すなわち、人間の尊厳の原則である。人間の尊厳とは、人間が目的自体として存在することを指し、人間を単なる手段、単なる道具としてのみ扱うことを禁止するものである。
道徳は理想の人格を求め、人間の尊厳の原則を内面化する努力を含む。他方、法は、理想の社会秩序を求め、道徳の可能性の条件であることを欲する。そのためには、法は道徳に基づくのではなく、正義という法に固有な価値に基づかなければならない。
正義とは、平等を意味する。この平等という価値を、人間の尊厳の原則から導来させるべきならば、人間の尊厳の平等こそが、法価値であることを帰結する。国際法も、法である以上、人間の尊厳の平等に基づくことになるだろう。
/2 「責任ある主権」:国際社会の「防止する責任」
しかし、「保護する責任」は、国際社会の補完的責任を強調し、「防止する責任」と「再建する責任」をも主張する点では、肯定的に捉えうる。特に、深刻な人権侵害の事態の発生は、国際政治の敗北であり、全力を注ぐべきは、その防止なのである。
/3 気候正義と「生命権」の保護:国際社会の責任
どのようにすれば自然の論理によりそい、自然から恵みを得られるか、最新技術と同じように、伝統的な知恵や方法の中にも、可能性と選択肢が与えられていると言える。
コラム 【提言】平和の配当の制度化:人類の安全保障拠出レジームの構築
第二章 法価値に基づく国際法法原論
/1 国際社会の一般意志と慣習国際法の成立要件
しかし、「特殊意志」は法を生まない。「一貫した反対国の理論」が有効に主張されるためには、それが国際社会の「公共的理由」に基づき、問題となる慣習国際法規範に対する例外規定として、国際社会による一般的承認を集め、一般化可能である場合に、合法的な逸脱を認められる可能性があるに留まるだろう。
/2 条約の解釈規則の体系化
さらに、ウィーン条約法条約31条3(c)によれば、文脈とともに考慮すべきものとして、当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則がある。
条約の規範内容は、その条約単体で完結するものではない。この規定は、国際法の断片化との関係で重要性をもち、単なる形式的な参照ルールではなく、「国際法秩序の体系的一貫性を維持するための積極的な解釈指針」へと再定義されることになるだろう。
/3 国際法の位階制と整合性
法的原理間の整合性は、法的原理の解釈に不可欠の要請であり、法解釈の指針に一貫性を求める点で、国際法の断片化に対抗し、国際法秩序の規範的統一の保障を志向する。それは、国際法の適用における一貫性を求める「法の前の平等」という、法システムに内在する要請である。
第三章 国際社会の現代的課題と展開
/1 核軍縮における日本の役割
「文民及び戦闘員は、この議定書その他の国際取極がその対象としていない場合においても、確立された慣習、人道の諸原則及び公共の良心に由来する国際法の諸原則に基づく保護並びにこのような国際法の諸原則の支配の下に置かれる。」(第一追加議定書1条2項)。
これは、国連憲章、日本国憲法前文にも劣らない、現代において最も重要な法の表明の一つであるだろう。「自衛の極端な状況」は、法的な空白でも、良心の空白でもないのである。
/2 紛争処理の「非裁判手続」
国連の安保理も総会も、政治的機関である。そうであるからこそ、それぞれの規範的主張を、共通の正当化理由に基づかせることを意識しなければならないだろう。当事者間の公平性は、当事者間の合意の本質である。それは、「立場の反転可能性」の思考プロセスまたは対話プロセスによって、求められるべきものである。
それは、単に共通の正当化理由ではなく、国際社会の「公共的理由」に基づく公平性でなければならないだろう。
/3 基本的人権としての「水と衛生への権利」
ただし、締約国は、「漸進的実施義務」の達成のため、「自国における利用可能な手段を最大限に用いること」を義務としていることには注意が必要である。(社会権規約2条1)。
また、「水と衛生への権利」との関係で特に注目されるのは、「漸進的実施義務」においても、締約国は、最低限のレベルの人びとの必要を満たすべき「最低限の中核的義務」(minimum core obligatioin)を負っていることである。(東澤 2022, p. 48)「生命権」の要請でもある「水と衛生への権利」は、即時的実施義務となる場合が考えられるのである。
コラム 「刑法の素人による独白」
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