【あらすじ】
お蔦と妙子のことで恩師酒井の逆鱗に触れた上、掏摸との共謀を疑われた早瀬は、規律の厳しい参謀本部の職を辞し、家を畳んで郷里の静岡へ都落ちした。
そこへ赴く急行列車の中、子どもを連れた美麗な婦人と出会い、彼女も同じ所で下りるということから、河野という家をご存知ないか―と尋ねると、「あら、河野はわたくしどもですわ。」
それは河野英吉のすぐ下の妹、一族で第一の艶を誇る菅子であった。
英吉と妙子との縁談を調えてもらいたいとの考えもあり、菅子は早瀬との関係を深めてゆく。
やがて早瀬は、長女道子など、河野家の人々とも関わり合っていくが、そこにはある目論見があったのである…
早瀬と、彼を取り巻く女たちを中心に描き出される、絢爛たる人間絵巻の後編。
【あとがき より】
本書は、明治後期から昭和の初めにかけて活躍した作家、泉鏡花(1873-1939)の作品の現代語訳である。
鏡花の作品世界に満ち溢れる、美妙幽玄な魅力を音に聞き、それを味わってみようと足を踏み入れたものの、特異な文体によって描き出される風景の綺羅のような輝きに目を眩まされ、道半ばで現の世に戻らざるを得なかった人はけっして少なくないだろう。
訳者が目指したのは、現代の一般的読者が、大きな困難を感じることなく、内容を把握しながら読み通すことのできる文章に仕上げることであった…
【訳者略歴】
白水 銀雪(しろみ ぎんせつ)
慶應義塾大学大学院博士課程中退(専攻:数学)
システムエンジニア・プロジェクトマネージャー・コンサルタントとして、宇宙分野を中心とする科学技術系システム開発に従事
現在、蓼科にて山暮らし
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