秋を舞台にした短編6篇になります。6篇の物語の一つ一つがほんのひと時でも、読んでくださる方の心に寄り添うことができたなら、とっても嬉しいです。
その店は祭りの数々の屋台の列に並んでいながら、やる気なさげに浮いている。そやけど、その金魚すくいのおっちゃんのことがなんとなーく気になってしもたもんやから、ふらっと立ち寄ってしまった。夏の祭りやなくて、十月のあたまに開催される秋の祭り。その祭りが開催される三日間に、小学生のあの頃の僕は母親から貰った百円玉を三枚握りしめては夢中で過ごした。三百円で、ほんまによう楽しめたんよなぁ。そんなあの日のことをどういうわけか、自然に思い出していた。『金魚すくい』より
目次
1.秋と魔法と扉と
2.駅の出口から
3.月の下で
4.金魚すくい
5.秋の日のノート
6.北欧の駅で
本を入手していないとコメントは書けません。
木々や自然を秋の色に染める尊い存在達がいて、彼らが私に優しく囁きかけては、心の扉を開いてくれて。
何気なく散歩しているだけなのに、そんな優しく豊かな気持ちにさせてくれる。
そんな文章に出逢えました。
この物語の中には、人との交流によって自分自身を見つめることが出来たり、人や命に対して真の思いやりのある、心の優しい人たちがいて。
そんな彼らの日常に触れさせてもらっていると、自然と自分の日常にもきらめきのようなものが蘇って来るように感じます。
そして、人を大事にするように、自分自身も大事にする事も忘れてはいけない事。
1人静かにノートに向かい、自分と対話をする事の素晴らしさも教えてもらいました。
爽やかな秋の色や風の中で、通い合う心のあたたかさ、交わす笑顔、自分自身との出逢い。
物語中に流れるように奏でられている作者のたいいちろうさんのおおらかで優しい感性が、自分は本当に大好きだなぁって、改めて感じています。