漫画に出てくるような、記号みたいな片田舎の中でしか生きられなかった。
会ったこともないのに『じゃんけんトリオ』と呼ばれた僕たちは、親の背負った職業から逃げられないまま高校生になって初対面した。
大人たちの愛欲、手芸部での日々、そしてジャガイモみたいなクマのぬいぐるみ。
それでも日常が続いていくなら、見なくていいふりだってできたのに。
ねえ、宮沢。紙山と僕を置いて、一体どこへ消えたんだい?
NovelJam 2024参考作品
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じゃんけんトリオと言われる若者たちの交流を三人組それぞれの視点でザッピング感覚で心情を並べながら描く、多様性に満ち溢れた青春小説。とは言っても絵に描いたようなイケメン美女が主役ではなく、ごく当たり前にいる、欠点もあり劣等感もありカッコつけたりするが上手くいかないことのほうが多い、全く絵にならない男と女が主人公である。そこまで書くと、そんな地味な登場人物の出る小説なんか読みたくない、と言われそうだが、まあでも、読み始めたら一気に最後まで読んじゃうんですよ。なんでだろう?決して美文でもないし、地味な登場人物は本当に地味で馬鹿正直でダサくてキモくてどうしようもないんだけど、でも、読んじゃうんだよな、これが。そんな小説です。興味あったら読んでみてください。無理して高いレストランでカロリー過多の食事をするより、部屋に籠もって布団を被りながらコンビニで買った期限切れの塩むすびを食べる、そんな小説です。