北越戊辰戦争の佳境、若き米沢藩士 島津晴之助は、奥羽越列藩同盟の兵として新潟湊の防衛にあたっていた。迫りくる圧倒的な新政府軍の大軍を目の前にして、晴之助はひた走る。九死に一生を得た晴之助はパーム宣教師と出会い、新たな生き方を模索する。
――戦争の不条理と命の尊さを描く歴史医療ロマン。
NovelJam 2024参加作品
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NovelJam2024新潟会場からお贈りする作品は、歴史時代物をテーマにしているので、他会場のものとはひと味違います。そういう意味でも今回のNovelJamはバラエティに富んだ作風を取り揃えているので、読者の方々は書影と概要をひと通り見通してから、自分好みの本を手に取ってみるのがいいかもしれませんね。
という訳でこの小説も歴史時代小説の範疇に入り、かなり書き込んである硬派な仕上がりになっています。それでいて、知る人ぞ知る著者の萬歳淳一さんは産婦人科医師を勤めながら、過去に参加したNovelJam作品に於いても産婦人科医療を題材にした小説を寄稿しています。そういう意味でもこの小説は、歴史時代小説の物語の中で日本初の西洋医学に基づいた産婦人科医療を描くという、著者自身の得意分野を歴史時代小説に結び付ける、ある意味に於いてセンス・オブ・ワンダーを感じさせる作品として捉えることができます。過不足なく書き込まれた重厚な筆致から、著者自身の理想と理念が強く漂ってきます。心の奥底に深く刻み込まれるものがありますね。