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文芸
2026.02.01発行

『放っておいてください、寡婦ですから』

霧原 真著 ciansih
放っておいてください、寡婦ですから
タチヨミ
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979円
紙本版なし
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作品紹介

五年目の守寡、我が家に賊が入った。

あれは、どこにでもあるような夜だった。
外は大雨が降っていた。

私は子どもを連れて庭に出て、干していた洗濯物を取り込んだ。
そして、部屋の扉を押し開けた瞬間――
家の中に、見知らぬ人影がいくつも増えていた。

仮面の男たちだ。

白く裂けるような稲妻が走り、その一瞬の光が、彼らの仮面を照らし出す。
座る者、立つ者。
その目の奥には、遊ぶような笑みが浮かんでいた。

私は全身が震え、空気に濃く漂う血の匂いに気づいた。

――人を殺して楽しむ魔がいる、そんな噂を聞いたことがある。
目の前の仮面の男たちは、きっと人ではない。

室内で、唯一腰を下ろしていたのは、黒衣の青年だった。
闇の中から、熱を帯びた視線で、私をじっと見つめてくる。
その目には、隠す気もない欲情があった。

彼は、隣で刀を抜こうとした部下を手で制し、
驚くほど丁寧な口調で言った。

「おい、寡婦を困らせるな」

そして、まるで世間話でもするように続ける。

「雨で道が滑りやすく、山道も危険だ。
 一晩、ここで雨宿りをさせてもらえないだろうか?」

私は体をこわばらせたまま、ただ頷くことしかできなかった。

――それが、すべての始まりだった。

彼らは去らなかった。
一夜、また一夜、さらに一夜。
雨はとっくに止んでいるのに。

私は何度も逃げ出そうとした。
だが、そのたびに捕まった。

彼は、私の考えをすべて見透かしているかのようで、
何をしようとしても、先回りされてしまう。

堪えきれなくなった私は、亡き夫の位牌を持ち出し、彼の前に突きつけた。
これで、彼の執着が冷めることを期待して。

「……私には、夫がいます」

「位牌は見た」

「子どももいます」

「ちょうどいい。俺にはいない」

「……私は病気です。逆上すると、人を殺します」

「奇遇だな。俺も病気だ。殺されるのが、特に好きでね」

彼は私に無理やり婚礼をさせた。

それからというもの、彼は本当に悪を捨てたかのように変わり、
血に染まっていた手で、台所に立ち、料理を作るようになった。

ただ一つ、彼が私に求めた条件は――
決して、その仮面を外さないこと。

だがある夜。
彼が眠っている隙に、私はその仮面を盗み取った。

背筋が凍り、全身に鳥肌が立った。

後ずさる私の目に映ったのは――
亡き夫と、寸分違わぬ顔。

いつの間にか目を覚ましていた彼が、私を見つめ、低く笑った。

「言っただろう。
 外すなって」

*

商星瀾は、堕魔した後、すべての記憶を失っていた。

自分がなぜ魔に堕ちたのか。
それを、この先思い出すことはないだろうと、そう思っていた。

――あの農家に身を隠すまでは。

そこに住んでいた女は、ひどく可哀想な、美しい若い未亡人だった。
一目見た瞬間、どうしようもなく惹かれた。

好きで、好きで、たまらなかった。

だが彼女の口から出るのは、いつも「夫」の話ばかりで、
それがたまらなく腹立たしかった。

そしてある日、
彼女が、最愛の夫の位牌を、彼の目の前に叩きつけた。

その瞬間、雷に打たれたように、思考が止まった。

そこには、はっきりと書かれていた。

――
商星瀾
楚黎之夫

すべてを思い出した。

五年前。
彼は、愛する妻に突き落とされた。

崖の底で、身体は壊れ、這い上がってでも殺してやりたいと願った。
その憎しみの果てに、魔へと堕ちたのだ。

――そして今、
彼は再び、彼女の前に立っている。

仮面の下で、微笑みながら。

電子:1138㌻/752.4KB/新書サイズ EPUB:1.6MB

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