人類はこれまで、地面の下に眠るものを巡って幾度となく争ってきた。金、銀、石炭、石油、天然ガス、そしてレアアース。地下資源を手にした国家は繁栄し、持たざる国家は依存を余儀なくされた。二十世紀の戦争史を振り返れば、その多くの背景に資源の存在が透けて見える。文明は理想で動くこともあるが、現実にはエネルギーで動いてきた。そして二十一世紀、人類はついに地球の外にまでその欲望の手を伸ばし始めている。
その対象は、月だ。
夜空に静かに浮かぶ白い天体。古来より詩人に愛され、恋人たちに見上げられ、神話の舞台にもなってきた月。しかし科学者と戦略家の目には、月はもはやロマンの象徴ではない。そこには、未来のエネルギー覇権を左右するかもしれない“ある資源”が眠っていると考えられている。その名は、ヘリウム3(Helium-3)。(112550文字)
本を入手していないとコメントは書けません。