街灯の灯りがその光を煙のようにぼんやりと夜の街に放つと、その光の煙が風で右へ右へと流されていく。その光を追いかけるようにして、吸い込まれるようにして、僕はいつもの街角を右に曲がっていく。(『街角その2』より)ふと歩いていったその道の先にほんの少しのよいことがあったりもして。5篇の人生賛歌のような短篇集になります。5篇の物語の一つ一つがほんのひと時でも、読んでくださる方の心に寄り添うことができたなら、とっても嬉しいです。
目次
1.君は僕
2.街角
3.青春の隅っこ
4.夜空の黄色いまる
5.街角その2
本を入手していないとコメントは書けません。
心の奥底にいるもうひとりの自分。
普段は奥の方でそっと存在している心。
それは、深い感謝の想いであったり、いつかの哀しみであったり、
記憶の中の、自分だけのとっておきの居場所であったり。
それぞれの物語に描かれる人物の深層に存在する心が、胸にジンワリと染み込んで来ます。
その感覚が私にはとても馴染んで、暗闇にポッと灯るライトのような優しい癒しを感じます。
それは、この物語たちが連れて来てくれた癒しであり、心地の良い贈り物です。
人はひとつの側面だけでなく、多様なものを抱えていて。
それがたとえ苦しみを伴うものであるとしても、人はそこから愛を膨らませ、人に与え与えられて生きて行ける。
そんな美しさがこの世界にはあるんだよと、この物語たちは教えてくれているように思います。