首の後ろにある精神制御装置がオフの間、僕は何も感じず、何も覚えないまま平日を過ごす。スイッチがオンになるのは、週末だけ。目が醒めると、台所の棚に置いておいたチョコレートが消えている。平日の僕が食べたのだ。
ある週末、目を醒ますと、僕は知らない駅にいた。駅の名は、船堀。駅前の建物の上には、一本の塔が立っている。導かれるように展望台行きのエレベーターに乗ると、白い手袋のエレベーターガールが、僕を見たことのない場所へと運んでいった。
そこで待っていたのは、僕と同じ目の高さで、僕と同じ声をした男だった。
「はじめまして。過去の僕」
未来の僕と名乗る彼は、月に行きたいのだと言う。そのためには、君の時間が必要なのだと。
その日から、僕は装置をオンにする時間を少しずつ増やし、彼から届く課題に取り組みはじめる。それが何の役に立つのか、僕にはまだ分からない。それでも、船堀の塔は、少しずつ月へと近づいていく。
月で暮らすことを夢見る、未来の僕。週末だけを生きてきた、今の僕。
塔の上で出会った二人の僕が、最後にたどり着く場所とは。
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