青い海のそばに住む流木のシタラは、優しいお日様や南の小島に住む仲間達、友達の小鳥、木の頭に根づいた花と共に暮らしていました。しかし音楽団と出会うことで、自分も楽器に生まれ変わりたいと願います。果たしてシタラの願いは叶うのでしょうか。夢を諦めない人に向けた冒険譚を、ここにお届けします。
NovelJam 2024参加作品
本を入手していないとコメントは書けません。
大海原で目を覚まして、いつの間にかここにいる。
多くのおとながそうであり、多くのこどもがこれからそうやって生きていく。
「楽器になりたい」と願うシタラは、ひたむきで、折れない。
楽器にならなくとも流木は流木として生きていく道もあるけれど、シタラはそれでも楽器になりたいんだ。
私も立派な楽器になるぞ!
立派でなくても、いい音を鳴らす楽器になるぞ!
そんなあたたかいともしびのような勇気をそっと分けてくれる。
楽団や花との掛け合いも楽しく、ニシキヘビと対峙するシーンは手に汗を握る。
鮮やかな色彩と、太陽の光が降り注ぐ海や森を感じられる作品。
すっごく可愛い❤
表紙も物語の内容も読後感も何もかもが可愛いくて素敵な気持ちになれます☆彡
まず真っ先に可愛い流木シタラ君の表紙が目に入りますよね。それでハートウォーミングなお話なんだろうなと思いながらページをめくっていくと、どちらかと言うと大人が無理して児童文学向けの文体で書いたものとは違う、シンプルな文体で矢継ぎ早に流木シタラ君や南の島の仲間達が次から次へとわちゃわちゃと描写されていくので、気がついたら本当に南の島に訪れてカラフルな虫や鳥やちいさな動物たちと戯れる感覚に浸ってしまいます。本当、カラフルですよ。
改めて思うと、どことなく梶井基次郎の檸檬のような匂いもします。物語中盤に登場する生きたピアノやハープ、ギター、バイオリンの音楽団も、宮沢賢治の黄いろのトマトに登場したサーカス団に重なります。そういう意味ではフェデリコ・フェリーニ的でもあり、ティム・バートン的な映像が喚起される文章が書ける作家さんだなと思いました。
まあ、大人ぶって文学とは?としかめっ面で文学を考えている人は、騙されたと思ってこの本を読んでみてくださいな。きっとアーサー・ヤノフのプライマル・セラピーみたいな出来事が起こり、あなたの古びた文学脳を揺さぶることでしょう。疲れている時に読むと元気が出ますよ。お薦めします。